「なんて言われたの」


「……別に、元気でやってる? みたいな」


「お姉ちゃんってよりお母さんだな、それは」





聖里くんに恋しちゃうかもみたいなあのくだり、さすがに本人に伝えるには度胸が足りなかった。



……しないよ、しない。
しいちゃんが期待するような展開にはならないとおもう。






「入ってきていいよ、次」


「あ、うん……バスタオルとかって……」


「浴室に置いておいたから使って」


「ありがとう」





数時間前に家中を案内されて覚えた浴室へとまっすぐ向かう。
いろんなことがあって疲れた……。
今日はご飯食べたらすぐ寝ようかな。




……でも、きっと、これって。
聖里くんと二人暮らしをしていることって、周りに言わないほうがいいのは明確だよね。



どうせ一か月限定だし、誰にも言わず、ひっそり終わればいい。




芙実ちゃんくらいには言ってもいいかな。
でもその他の女子に知られたら……きっと、っていうか絶対、突っかかられる。



ただでさえ、あの人気モデルSHINAの妹って悪目立ちしてるんだから、よくない反感を買うのは目に見えてるし。




「……はあ」




無意識のうちについたため息は、静かな空間に消えた。
よく考えたら、さ。



普段から聖里くんに寄ってたかって騒いでる女子じゃなくて、
聖里くんと学校で会話なんてすることのないわたしが同居することになったのは神様が与えたなにかの試練なのかな。




本当にいるんだとしたら、死ぬまでに答え教えてくれたりする?
っていうか、それじゃなきゃ許さないけど。




……だって、こんなの、荷が重すぎる。