今日の主導権はなぎさにある。
俺が決めた。




服を見たいという彼女の願望をかなえるため、適当にふらついて良さそうな服屋に入る。
手を繋ぎたいと言い出したなぎさは、あっさりと俺の手から離れて店内を見て回っている。





俺は手に残ったなぎさの暖かさをかみしめて、幸せを実感していた。





「ひじりくんっ」





突然名前を呼ばれて、なぎさの元へ近寄る。
手には二着の服がかかげられていた。





「どっちが似合うと思う?」




……難しい質問来た。
どっちって言われても……。



似合うかでいったら、そうだな。





「どっちも似合う」


「……もー、真剣に考えてよ」





なぜかふてくされてしまった。
真剣に考えた結果なんだけど……?





だって、なぎさは何着ても似合うじゃん。
全部かわいいのに、悩む必要ない。





「じゃあどっちも試着してくるから待ってて!」




そういって試着室に入っていったなぎさのあとを追いかけて、俺も試着室の前で待つ。
女子特有のファッションショーだなあ。
なぎさだから許せるけど、全然。