元いた家に帰ってきた。
いわゆる、実家。
お母さんもお父さんもいないけど。
ドアを開けたら、しいちゃんがリビングでココアを飲んで待っていた。
わたしのココア好きは、しいちゃんの受け売り。
「おかえり、なぎさ」
「ただいま」
キャリーケースをひとまずリビングの隅に置いて、どさっとソファに座る。
疲れたあ……。
「なぎさもココア飲む?」
「飲む!」
嬉々としてソファからテーブルのイスに座り直し、しいちゃんがココアを入れてくれるのを待つ。
しばらくしてわたしの前にコトン、と置かれたマグカップ。
一口すすって、幸せな気持ちになった。
それなのに。
穏やかな心をざわつかせるのは、いつもこの人だ。
「彼氏できた?」
「ぶふっ」
盛大にむせた。
人が飲み物飲んでるときにとんでもないこというな。
……な、なんでわかったの?