「もう満足したでしょ、先輩」
突然上から降ってきたのは、聖里くんの声。
先輩は「えーっ、まだお話ししたいー!」と駄々をこねている。
「あんま、折田さんを困らせないでやって」
先輩のことを押しのけて、聖里くんは机の上にわたしたちが注文した分のケーキと飲み物を置いた。
「あ、全部やってくれたの、ひーくん」
「あんたがここに張り付いて戻ってくる気配ないからね」
「ありがとー」
先輩は去り際、「じゃあね、なぎさちゃん。がんばって」と言い残して立ち去って行った。
がんばって……って、なにを?
聖里くんも相当だけど、先輩も意味深なセリフを残していくなあ……。
「なんか思ってたよりいいひとだったね、三滝先輩」
「……うん」
一部始終を黙って見ていた芙実ちゃんが、おかしそうに笑いながら言う。
聖里くんに対して恋愛感情はないって言われたとき、心なしかほっとしていたのは……気のせいだよね。