「おい、やめろよ!」
「うるさいですわね!このっ!!」

さすがに見かねたザラードが止めに入ったけれども、リリアナさんはますます意固地になってムチをより一層強くしならせた。

「グエエエッ!!」

遂に、痛みに耐えかねたヤークが怒りを露わにし、猛ダッシュで走り始めた。

「そうですわ!最初からわたくしの命令を聴けば痛い思いなどしないのですわ!」

リリアナさんは得意満面の笑みで気分良さそうに騎乗していたけれども……次第に上がっていくヤークの疾走スピードに、焦りを見せ始めた。

「ちょっと、速すぎる!スピードを緩めなさい!」

ピシッ!と再びムチを振るったのがよくなかった。更に興奮したヤークは、コースも何もなく無茶苦茶に走り始めた。

「きゃああああ!!」

リリアナさんは何度も振り落とされそうになり、必死にヤークの首にしがみついてる。けれども、彼女を敵と認定したヤークは、首を激しく振って彼女を落とそうとしていた。

「まずい!バーミリオン!!」
《はいよ!》

近くの木で待機していたバーミリオンは、あたしの合図で飛来してくる。ギリギリの低空飛行を伴走しながら、タイミングを見計らってその背中に飛び乗った。