ヴァイスさんが初めて子どもの頃の話をしてくれて、なにか嬉しくなった。きっと今、あたしの口元が緩んでるだろう。

「……どうかしましたか?アリシア、ずいぶん嬉しそうに見えますが」

ヴァイスさんから怪訝そうに訊かれてしまった。やっぱり、指摘されるほど顔が緩んでるんだ。

思わずほっぺたを手で触ってしまい、後ろに控えたメグから咳ばらいをされてしまった。

「アリシア様、お行儀が悪いですよ」
「ごめん、ごめん……でも」

ついつい、自分の気持ちをヴァイスさんに伝えたくなってしまった。

「ヴァイスさんが子どもの頃の話をしてくれたのが嬉しくて……もっと聴きたい、って言ったら図々しいでしょうか?」
「アリシア……」

ヴァイスさんは手にしたカトラリーをテーブルに置き、あたしをまっすぐに見つめてくる。急に恥ずかしくなって目を逸したくなるけど、負けまいと睨み返した……あれ?なんか違う??

「ふっ…」

オマケに、ヴァイスさんが噴き出すし……。
クスクス笑われて、さっきと違う恥ずかしさに頬が熱くなる。

「ヴァイスさん!」

あたしが咎めるように声を張り上げて呼ぶと、彼はコホンと咳ばらいをして真面目な顔に戻る…目は笑ったままですがね。

「失礼しました。アリシアがそうおっしゃる…ということは、少しでも私のことを知りたい…と考えてくださったということですよね?もちろん、歓迎いたしますよ。どんなお話しをしましょうか」