夏休みの視聴覚室には、形ばかりのウクレレケースを肩にかけて通った。


初日はネット検索して、おののいた。


「失敗談、多っ! ファーストキスで失敗してる人ばっかじゃないですかー!」


友歌先輩と陽帆に慰める気はないようだった。


「それ、どっちも初めてのケースみたいだよ? 彩葉の彼氏はキス経験済み?」

「ええっ、知りませーん」


あの真面目な壱樹が私以外の誰かとキスしていたら……と思うと胸が潰れそうになる。


「それなら出たとこ勝負になるんだね。もし彼氏さんも初めてなら彩葉ががんばろ」


壱樹も初めてだったらいいなと思うけれど、その場合ステキなキスをするためには私がどうにかしないといけないなんてー!


「まあまあ、初日からそんなに落ちこまない」

「そうそう。勉強が進んでいけば、解決策が見つかるかもしれないしね」

「ほ、ホントに?」