しまった、つい……


視聴覚室も完全防音ではない。私は無言で頭をぺこりと下げた。


「壱樹と……」


私は声を落として説明し始めた。


「キスしたいんですけど、何せ初めてだからどうしたらいいのかわからなくて。でもファーストキスって1度切りだし、ステキな想い出になるキスにしたいんです」

「なるほど」

「乙女だね」


友歌先輩と陽帆は真剣に見つめ合った。


「……私たちも経験はないけど」

「……一緒に勉強してみましょうか」

「勉強? 何を? ま、まさかキスの仕方を!?」


戸惑う私を尻目に、ふたりは大きく頷き合った。


「次のデートはいつ?」


友歌先輩は私よりも前のめりになった。


「8月の第一土曜です。『花火大会に行こう』って約束してて……」

「いいね、花火大会の帰りにキスって。それ、狙っちゃえ!」