「あるわけないでしょ? 彩葉がサークルに入ってきたとき、私と3年が大騒ぎしたの覚えてない? 『モテないウクレレサークルにもついに彼氏もちが!』って」


しかし陽帆が突っ込んできた。


「ひょっとして、彩葉はキスしたの?」

「う、ううん、ううん!」


私は両手を広げて大きく左右に振った。


「でもそんな質問してくるってことは……」


きゃー、ヤバい!


いくらふたりでも、壱樹から『キスしていい?』と聞かれたことはバラせない。


自分の預かり知らぬところで、彼女がそんなことをベラベラ喋っていたら嫌なはず。


「わ、私、彼氏とキスしたいんですー!」


声が裏返ってしまった。


友歌先輩は驚いた顔をすると、廊下側に耳を立て、誰もいないことを確認した。


「声が大きいよっ」