「とりあえず座ったら?」


陽帆が、友歌先輩の正面、自分の隣の席の椅子を後ろに引いてくれた。


派手に登場してしまったけれど、これから相談しようとしている内容を考えると、小さく固まってコソコソ話したほうがいい。


私は素直にその席に腰掛けた。


そして、もっと友歌先輩と陽帆に近づくために、上半身を斜め前に倒した。


それだけの動作でふたりにも内緒話だということが伝わったらしい。好奇心でウズウズしだした。


昨日の通話のときほどではないけれど、私もドキドキし始めた。


「それで? 焦らさないで話して」


友歌先輩に促されて、ゆっくりその言葉を発音した。


「キス、」


ふたりして大きく目を見開いた。


「したことありますか?」


友歌先輩は途端にガッカリした。