「ぎゃっはっはっ、くすぐったーい! 脇腹触んないでっ」

「えっ、でもヒロインは肘を曲げてますよね? その先はどうしたら……」

「腰、腰まで回して! あとしっかり力入れて!」


陽帆は指示された通りに腰に腕を回し、グッと力を入れた。


「えっ……私がそれを壱樹にするんですか? いかがわしくないですか?」

「何言ってんの。これからキスなんていかがわしい行為をしようとしてるくせに」

「いくら友歌先輩でも聞き捨てなりません。キスはいかがわしくないです!」

「いかがわしいよ!」


友歌先輩と言い合っているうちに、スクリーンのほうは着々とキスに向かって進んでいた。


ヒロインの動きを追いかけていた陽帆が、首を傾けた。


「待って、女性側も傾けるの!?」


スクリーンを確認すると、ヒーローに比べてその角度は小さいものの、ヒロインの首も傾いていた。