私の耳に温かく響くハイ・バリトン。


声の持ち主は私の彼氏、壱樹(いつき)


優しい壱樹が大好き。ちょっと真面目すぎる面もあるけれど、そこも含めて。


中学卒業式の当日に告白、というベタなこともやってのけてくれた。


私はスマホを右手から左手に持ち替えつつ、『うん、うん』なんて頷きながら、壱樹の声に聞き惚れていた。


この声で『ずっと前から彩葉(いろは)のことが好きだった』って告白してくれたんだよね……


あれから早3ヵ月半が過ぎようというのに、未だに壱樹から『彩葉』って呼ばれる度にいちいちキュンとしてしまう。


「それで……次のデートでキス……していい?」


えっ、今『キス』って言った? まさか壱樹が?


う、ううん、聞き間違いかもしれない。私の願望がとうとう幻聴になって聞こえてきたとか……