「雨宮さんも楽しんでる?」

「……えっ、はい」

 湯浅先輩が今度は私に話しかけ始めると、里衣子ちゃんは他のクラスメイトのとこへ手伝いに行ってしまった。

(ひとりにしないでよー……)

「そっか。それなら良かった。文化祭ってやっぱり、皆が楽しめないと学校の行事として成り立たないと思うからさ。それって、準備段階から始まってると俺は思ってるんだ」

「湯浅先輩は生徒会のお仕事もありますし、大変ですね。こういう見回りまで……」

「俺だけじゃないしね? 他の生徒会メンバーも色んな教室回って見てるから。ラストスパート頑張ろう!」

「はい」

 私が何気なく返事をすると、ポンと手を頭におかれ、軽くクシャっと撫でられた。
 その行動に私は驚いて、座っていた椅子から落ちてしまった。

「ふふっ……」

 湯浅先輩は優しく笑って、他の皆の方へと話しかけに行った。

(うそ……今、頭撫でられた……!?)