すると、入口にいた先輩が私と里衣子ちゃんがいるほうへとまっすぐ歩いてきた。

「やばっ! ひな、先輩がこっちへ来る……」

「う、うん……」

 ……ドキドキ、ドキドキ。

 実は私、一年くらい前から湯浅先輩のことが好き。でもそのことは誰にも話していない。
 里衣子ちゃんにすら話せていないのは、少し申し訳なく思っている。

「宇野さんと、雨宮さんだよね? どう? 準備楽しい?」

「えっ、あっ……はい、もちろんです!」

 里衣子ちゃんはもう既に目が湯浅先輩をロックオンしていて、周りが見えていない。
 もちろん里衣子ちゃんだけじゃなく、さっきも何人か話しかけられていた男子も女子も、湯浅先輩を見る目は憧れの眼差しだ。女子の中では、恋してる人もいるだろうけど。