そんな最中、教室の前方の入口付近で、聞き覚えのある声が……。

「文化祭の準備、捗ってるか~?」

 その声が聞こえただけで、クラス中の人たちがざわめきだした。
 聞こえたその声の主は、生徒会の会長である湯浅礼(ゆあされい)先輩だ。湯浅先輩は、実は会長を今回含め二回している。

(湯浅先輩が二年生の時にもやってたんだよね……)

「捗ってま~す!」

「会長も一緒にどうですか~!?」

 など、皆それぞれ返事している。

 うちの学校は、生徒会長は立候補の中から全生徒の投票で決まる。昨年は、三年の先輩を差し置いて、湯浅先輩が圧勝したのだ。

(あれだけ人気ある人だし、誰も文句言えなかったんだろうなぁ)

 イケメンな上に、学年や男女問わず人気の先輩で、フレンドリーなこともあってか、とても話しやすい。私も何回か話したことはあるけど、他愛も無い内容だった。
 先輩の落とし物を拾ったり、出会い頭にぶつかりそうになって謝ったり。