「仲がいいだって!」


2人が去った後、お嬢が満足そうに言う。


祖父が祖父なら孫も孫。


ここにも呑気なやつが一人いた。


どうやらお嬢のマイペースさは親父譲りらしい。


でもこの楽観主義に俺は救われてきた。


「ほら、もう寝ますよ」


「私寝る前にもう1回温泉浸かってくる!」


「え・・・?」


今回五十嵐組は家族や大人数向けに用意された貸切用の離れに泊まっている。


つまり、温泉は男女に分かれたりはしていないのだ。


「紺炉も行くんでしょ?いいじゃん。一緒に入ろうよ!」


俺は手に持っていたタオルを咄嗟に隠そうとしたが、素早い動きで手首を掴まれ阻止される。どうやら俺に拒否権はないらしい。


正直、どんどん自分自身に歯止めが効かなくなっていた。


お嬢が応えてくれるのをいいことに、こうしてコソコソ好き放題している自覚はある。


さっきのドラマの中で教師が取った行動を俺はどちらかというと非難するような目で見ていたが、親父に隠れて未成年の孫娘に手を出している俺もあの教師と大して変わらないと気づく。


とにかく、ここで断れるほど立派な大人ではない俺は、差し出されたお嬢の手を迷わずとって温泉の方へ向かった。