Side 愛華


家の前に到着し、傘をさして東雲さんの車からおりると後ろから「お嬢!」という声が聞こえた。


土砂降りの雨の中なぜか傘をさしていない紺炉が車から出て来てこっちに走ってくる。


「紺炉!ちょっと傘は!?なんでそんなビショビショなのっ!?」


「・・・・無事で良かった……」


気づいたら私は紺炉の腕の中にすっぽりと収まっていた。


いきなり倒れ込んでくるように抱きしめられた衝撃で私は傘を落としてしまった。


紺炉の体はかなり濡れて冷え切っていて、このままでは風邪を引いてしまう。


「・・・心配かけてごめんなさい。私のこと探してくれたんだよね?ありがとう」


早く家の中に入って、紺炉をお風呂で温まらせて。


頭では何をすべきか分かっているのに、まだ東雲さんがいることも忘れて私も紺炉の背中に手を回した。


その時。


「・・・ん?紺炉?ねぇ、ちょっと、重っ……いっ!」


全身の力が抜けた紺炉の全体重が私にのしかかってきた。


冷たいのは雨に濡れた服だけで、紺炉の体はとても熱かった。


「やれやれ、悪いことしちゃったな。雨の中愛華ちゃんのこと探し回ってたんだね」


東雲さんの声がして、この状況を見られていたことに気づいた。


彼は私の代わりに紺炉の腕を自分の肩にかけて支えてくれた。


彼がまだ帰っていなかったお陰で助かった。


私だけでは紺炉を運ぶどころか、このまま潰されてしまうところだった。


東雲さんは紺炉を背負って家の中まで運んでくれた。


「ほんと助かりました。ありがとうございます」


私は彼に頭を下げる。


紺炉は犬飼にバトンタッチし部屋に連れて行ってもらった。


「むしろ僕が誘っちゃったからこんなことになっちゃってごめんね。要にお大事にって伝えといてくれる?」


「はい、伝えます!」


「要とのこと、僕は応援してるからね」


爽やかなウインクと一緒にとんでもないことを言い残して彼は去って行った。



私は目を点にしてしばらく立ち尽くしていた。


なぜ彼が私の恋を応援してくれるのかはさっぱりわからないけれど、初めてできた〝味方〟はとても心強い存在だった。