その帰り、グッタリしながら喫茶店へ入ると
いつものコーヒーの香りが少し心を穏やかにしてくれた。
「あさ美ちゃん、おかえり。」
カウンターから私に声を向けたのは
綾子おばさんではなく、裕平くんだった。
『あれ、裕平くん…どうしたの?』
勉強を教えてもらうことは、もう終わったけれど
裕平くんはたまに喫茶店に来る。
だから、私が放課後こうして立ち寄れば
しょっちゅう会うことができる。
「今日は授業が早く終わったからさ。」
裕平くんはブラックのコーヒーを飲んでいて、
隣に座った私は
大人だなあ、と思いながらそれを見ていた。
「どう?高校は楽しい??」
一生懸命勉強を教えてくれた裕平くん。
その優しい笑顔に、私は笑って頷くしかなかった。