3学期が始まった頃のことだった。手足の先が凍るように痛かった。ある日、絵里ちゃんがピンクのとても可愛らしいマフラーをしてきた。
そのマフラーは当時流行っていたキッズブランドのもので、
周りの女子たちは羨ましがって絵里ちゃんを見つめた。
やっぱり、絵里ちゃんはすごいなあ。
完璧な“お嬢様”だ。
数日後の体育の授業のとき、
外は冷たい風が吹いていてみんな身を縮めていた。
「じゃあ、外は寒いから佐野さんは、教室で休憩していなさい。」
「はい。」
風邪気味で体育を見学すると申し出た佐野さんという女の子は
いつも絵里ちゃんが仲良くしているグループの一人だった。
私も同じ輪の中でたまに口を聞く女の子だ。
佐野さんは“よしみ”という名前なのでみんなからは“よっちゃん”と呼ばれていた。
よっちゃんは一人寒そうに校舎の中に入っていった。