『裕平くん、教え方すごい上手いね。』
温かいココアを一口飲む。
「さっき聞いてなかったくせに〜。」
裕平くんは笑いながら答えた。
『違うよ、裕平くんの説明っていつも分かりやすいなあって思ってたの。教師とか…絶対向いてると思う。』
「教師なあ…本当はなりたかったけど、俺は会社を継がなきゃいけないから。」
裕平くんはテーブルに肘をついて、遠い目をした。
『それはもう絶対にならなきゃいけないの??』
「うん、絶対。俺、昔から親の言うことにはむかえないまま生きてきたから。」
『そっかあ…』
私が下を向くと、
裕平くんは優しく笑って私をみた。
「だからこうしてあさ美ちゃんに勉強教えてるの、実はすげー楽しかったりするんだよ。」
『本当に?』
裕平くんの一言に私の顔は自然と上がる。
「本当。でも、これもあと3ヶ月で終わりだと思うとちょっと寂しいな。」
その後すぐに勉強に戻ったけれど、
受験が終われば、もう裕平くんに勉強を教わる習慣はなくなるのだと思うと
急に実感がわいて寂しくてたまらなかった。