「実は………ごめん。今日、綾子さんにあさ美ちゃんのご両親のこと聞いたんだ。」



『え………』

俯いて静かに喋る裕平くんは私の驚きも予想していたようだ。



「ごめんね。無理に聞くつもりはなかったんだけど…綾子さんが最近あさ美ちゃんは明るくなったって安心してたから………何があったんだろうって思って。」





裕平くん…


寒さのせいか、少し声が震えてる。



私の事情を知ってどう思った?

私から離れたくなった?






違う。

裕平くんはそんな人じゃないよね。





「辛かったな…。色々、本当に辛かっただろう?」





裕平くんは立ち止まり

私の頭を撫でた。


今度はしっかり

裕平くんの手の感触が残るくらいに。




「今だってまだ辛いだろうに、よく頑張ってる。もう少し早くあさ美ちゃんに会ってたら…その悲しみを少しでも取ってあげられたかもしれない…のにな。」





優しい表情をした裕平くんを見て、

目の奥にじわりと

何か熱いものがこみあげた。