9月


久々に袖を通した制服はクーラーの風に当たっていたせいか少しひんやりしていた。


3年生の自分はあと1年も経たないうちに卒業だというのに、鏡に映るその制服姿は新入生のようだ。






綾子おばさんの家に住み始めて1ヶ月。


住んでいた家の荷物は
大事なもの、使えそうなものだけを持ってきて

それ以外は処分した。






持ってきたものの中に
母のものはたくさんある。

まだ母を亡くした心は癒えない。

ただ時間だけが無常に過ぎていった。





そして私は今日から再び動き始める。





「あさ美ちゃん、おはよう。」


『おはよう、おばさん。』




食卓に置かれた食パンから香ばしい良い香りが漂う。


綾子おばさんの家はとても綺麗なマンションで、

家具はほとんどが白色のものばかりだった。



一人暮らしにしては広すぎるくらいの部屋に

私が一人、家族として加わったのだ。




荷物を置いたり、お客さんが来た時に使っていた洋室を私の部屋として使わせてもらっている。