後ろを振り向くと、陸は不思議そうな顔をして私を見ていた。
「なにが…?」
『…私……今からでも頑張り直せると思う?』
制服を片手にそう言った私の決心を
陸はすぐに理解したようだった。
そして
「もちろん。」
と、笑って答えてくれた。
お母さん
私は弱虫でいつも何かに怯えているような人間だったけど
これほどの辛さや悲しみを知ったなら
もうこれ以上に辛いものはないと思うんだ。
これ以上に悲しいことや、耐えられないこと、
残酷なこと、
もう他にないよ。
あったら見てみたいくらいだよ。
同じ屋根の下で家族3人だった
父と母と私。
毎日のように
ギャンブルや飲酒による暴力が絶えなかった父に
私だっていつ殺されてもおかしくなかった。
私は今この自分の胸で波打っている心臓の音は
母が精一杯守ってくれた命なのだと感じた。