火葬場へ向かう間
車の窓からずっと曇った空を見ていた。
隣で運転する綾子おばさんが口を開く。
「政之さんは…極度なアルコール中毒だったのね。」
私は窓から目線を外し、綾子おばさんを見る。
「お父さん、いつもどんな感じだった?」
『……お酒飲んで……よく…暴れてた。』
「あさ美ちゃんも………怖かったでしょう…。」
私が俯くと、おばさんは私の頭を優しく撫でた。
「おばさんが……もっと早く気付いていればよかったね…。」
雨はしだいに強くなり、窓を打ち立てていた。
まるで何かを訴えているかのように。
再び曇った空を見上げ、
どうして人は刃物一本で生涯を終えてしまうほど
脆い生き物なのだろうと
そんなことをぼんやり考えていた。
火葬場に着き、
母が焼かれている間
昼食を食べた。
久しぶりに胃にものを入れた気がする。
立派な御膳だったけれど
味がしなかった。