陸はただなにも言わずに私の手を握りしめていた。





陸の目からも大粒の涙が何度もこぼれ落ちる。




死んでいる母は驚くほどに冷たく、

何度触っても何度呼んでも
ピクリともしなかった。




もう

優しく微笑みかけてくれた母はいない。



中学3年生の私には

人の死というものがあまりにも大きすぎて

自分の人生とはかけ離れていたものなので、

理解することすら怖かった。





「今、警察の人から連絡があって…」




綾子おばさんは、腫れた目で私を見つめながら



私の前に正座して座る。




「政之さんが捕まったって。」




政之とは私の父だ。



母を殺した、藤井 政之。




「……なんでっ……こんなこと…」




綾子おばさんは、
悔しそうに

悲しそうに

何度も泣いた。




私も、涙が止まらなかった。