「あさ美……。もう二度とこんな真似するなよ。」
陸の真っ黒な瞳から一粒の涙が光り、落ちた。
私が生きていることで、こんなに美しい涙を流してくれる人がいるの…?
私には、もうわからない。
思い出すことができない。
人の命を感じ、泣くということが。
私は、心の中で何度も陸に謝った。
強く握られた手から伝わる。
陸がどれほど私を思ってくれているか。
私もなぜか胸が苦しくて泣きたかったけれど、涙が出なかった。
陸の手は幼かった頃を思い返すと信じられないくらい大きくて、男らしい。
そして何より温かかった。
その温度から陸の気持ちが伝わってきた。
彼は私に言いたかったのだ。
ただ一言、
逃げることなく、迷うことなく、
“活きろ”
と。