震える手で受話器を持ち、番号を押す。 『お母さん…お母さん……』 恐怖で涙が止まらなかった。 真夏だと言うのに寒気がして ただ 母の身体から流れる血液の多さに目眩を起こしそうだった。 救急車に乗り、病院へ向かったが まもなく母は 息をひきとった。 死んだ… 私のお母さんが死んだ……… たった一人の私のお母さんが…… お母さんが… 殺された。 私は分かっていた。 父が殺ったのだと。