陸は私にどうして学校に来ないのかを
決して聞かない。
陸は男で私は女。
男の友情と女の友情では、明らかに違いがあるし
陸と違って内気な性格の私には、人と接することがこの世で一番難しいことに思う。
今のように、一度現実から遠ざかってしまえば
ますます外の世界と距離ができてしまう。
陸は、言わなくてもそれを分かろうとしてくれているようだった。
何も聞かずに、ただ普通に来て、普通に話し、普通に帰る。
たったそれだけのことの中に、陸が私を心配してくれているのが伝わってくる。
陸なりの優しさなんだろう。
「あさ美、もしかして自分で勉強してんの?」
机の棚に並べてある参考書を見て、陸が言った。
『うん…。学校行ってないから、何もしなかったら頭悪くなるでしょ?』
不登校の生活の中で
私が唯一続けていたもの。
それは独学で勉強していること。