絵里は机の中の荷物を鞄に入れた後、
最後を噛みしめるように椅子に座りため息をついた。
「中学の時ホームステイした先の知り合いがカナダにいるの。
そこへ行って、一人で頑張ろうと思う。」
やっぱりコイツはやることがでかいなと思った。
海外に行けば今までと違い、家のことや外見だけでは人を簡単に寄せ付けられない。
慣れない環境についていく中で、本当の自分を見せなければならない。
精一杯。自分の力で。
『絵里らしい決断だと思う。せいぜい悩んで苦しんで戦ってきなよ、自分と。』
私が笑いながら言うと絵里は
まるで友達のような顔をして笑った。
「あさ美……………今までごめん。」
自分が一人になったことで初めてその孤独を知り、口が出た一言だろう。
『謝るのは、アンタが中身のある人間になって戻ってきてからにしてよ。』
私がそう言うと、絵里は困ったように笑って頷いた。
長い月日をかけて
誰かと孤独を分かり合えた瞬間だった。