父を許すこと
それは母を裏切ることと同じような気がした。
そんな単純な方程式を描いた私はまだまだ子供だろうか。
だけど、今だって頭から離れない。
母が殺されていたあの日のこと。
私はもうさっきまでのような例えようのない穏やかな気持ちで
父に会うことは二度とできないだろう。
母の一周忌を終えて
どこからか生まれた決意のほんの一瞬の時間だった。
刑務所からの帰り道
携帯を開くと陸からメールが届いていた。
“おじさん、どうだった?何があってもあさ美のお父さんに変わりねーもんな。変に落ち込むなよ?俺がついてるからな。”
陸にはあらかじめ
父の面会に行くことを教えてあった。
すぐに私の複雑な心を読み取ってしまうね、陸は。
昔からそうだ。
“俺がついてるから”
ちょっとかっこつけた優しさはちゃんと私の胸に響いてるよ。
明日から
新学期が始まる。