母に手を合わせているとき、昔のことを思い出していた。
幸せだった頃の小さな記憶。
父は、昔はとても優しかった。
一人娘の私を父と母は大事に大事に育ててくれた。
ところが私が小学生になったくらいに
父の仕事は上手くいかなくなり、ギャンブルやお酒でしか気を紛らわせなかった父。
少しずつ、何かが壊れていく瞬間だった。
まだ幼かった私には
父と母が言い争っている内容がわからなくて……
怖がりの殻を脱ごうとすればするほど、
ますます何かに怯えるだけだった。
私に兄弟がいれば、少しは何かが変わっていたのだろうか?
私が生まれてこなければどうなっていただろう?
今からはもうどうすることもできないけれど
父は今……
どうしているだろう?
そんなことを思いながら
綾子おばさんの隣で手を合わし、座っていた。