私が裕平くんに出会い、恋をする前から…
裕平くんと絵里の関係は決まっていたんだね。
手の届かない裕平くんを諦めようとする私を、
その横顔はまだときめかせる。
「俺は昔から怖がりでさ、弱気で、いつも親の言う通りにして生きてきたんだ。だからこれまでの学歴もこれからの進路も彼女との婚約も……
全部俺が望んでそうなったことじゃない。でも俺は逆らう勇気も、今の生活を捨てる勇気もない。弱いんだ、俺。」
裕平くんはそう言って苦笑いをした。
人の数だけ生き方がある。
裕平くんは、一見全てが裕福で幸せそうに見えるかもしれない。
でも違うんだね………。
いくらお金持ちでも
有名な会社の跡取りでも
自分の思う道を選べない。
私は裕平くんは世界が違う人だけど
抱えるものの大きさは私より大きい気がした。