次の日の朝
ニヤニヤしながら私に近づいてきたユキとナギサは
私が驚くことを口にした。
「ねえ、藤井さんのお父さんって犯罪者なんでしょ?」
ナギサが自信満々に良いネタを持ってきた、と顔をした。
「まだ事件から1年も経ってないのに、よく平気な顔で生活できるよね。
自分の妻を殺すような人間と同じ血が流れてるあんたが…同じ教室にいるなんて恐ろしいんだけど。」
ユキが笑いながら私に顔を近付けた。
『……なんで…それ…』
私は胸を引き裂かれた気持ちになった。
教室に入ってくるクラスのみんなが、こっちに注目している。
「私のパパ報道の仕事してるの。それで、昨日事件の記事見たのよ。」
ナギサが言った。
世間は厳しい。
私は母を亡くしたことによる慰めの目よりも
父が犯罪者という偏見の目の方が向けられることが多い。
圧倒的にいつもそうだ。