私は一息つき、心を落ち着かせてから話し出す。
「カナトは優しいねって言われるのが苦手ですか？」
「えっ」
キョトンとした顔をするカナト。そんなコトを聞かれるとは夢にも思っていないようだった。
私は続けて言葉を紡ぐ。
「苦手って言葉ではまだ生温いですかね。優しいと言われるのは嫌いですか？」
「...なんでそう思ったの？」
「カフェで打ち合わせをした時に一瞬淋しそうに見えた時があったんです。それはカナトの優しい所を皆好きになるって私が言った時でした。だから優しいって言われたくなかったんじゃないかなって思ったんです」
カナトは何も答えない。私は今見当違いなコトを言っているのだろうか...。そうかもしれない。それでも私の疑念は止まらない。
「番組とかで優しいと言われている場面はこれまでもいくつかありました。その時は普段と変わらない笑顔で答えていたと思います。でもカフェの時は違った。それは仕事相手としての私の前だったから...カナトの本当の部分が出た瞬間だったんじゃないのかなって思ったんです」
カナトは目の前にある真っ白いテーブルを見る。それをカナトがどんな表情で見ているのかは分からなかった。
「...いつも笑顔を届けるアイドルとして存在しているカナトが綻んだ瞬間だと思いました。もう一度聞きます。カナトは優しいって言われるのは嫌いですか？」