「カナトー!!!」
私は大きな声で彼の名を叫ぶ。
ステージ上の彼が私の方を見た気がした。いや、見た!!
「大好きだよー!!」
彼は笑顔で観客に向けて手を振り、歌い続ける。


カナトの歌が終わると、観客は拍手を送る。
「やっぱカナトの歌良いよなぁ〜!」
そう言いながら袖から出てきたのは、ハルカだった。カナトとハルカは男性アイドルユニットのオーディションに合格し、「ハルカナ」という名前で活動している。
ハルカの言葉に私は首がもげる程頷く。
「あははっ。ありがとうハルカ」
2人が顔を合わせて笑い合う。その様子に観客は悶える。
私はカナト一筋だが、運命共同体であり、互いを大切に思う2人の関係に魅了され、箱推ししているファンも多いのがこのユニットだった。
「お前らもカナトの歌最高だって思うよな!」
ハルカが観客に向かって言う。
「最高ー!」
ここに居る誰よりも大きな声で私は叫ぶ。
「皆ありがとう」
キラキラ輝いた顔で言うカナトのカッコ良さに倒れそうになるのを必死に抑える。
「まぁカナトの歌が1番好きなのは俺だけどな」
ハルカがカナトの肩に腕を回しながら言う。
その言葉に黄色い歓声が上がる。
「あははっ。僕もハルカの歌好きだよ」
また上がる歓声。それはもう歓声を超えて悲鳴に近かった。
優しく、誰でも温かく包み込むカナトと、そんなカナトを1番大切にし、ファンの心を擽る自分達の魅せ方も分かっているハルカの2人が人気になるのに時間はかからなかった。
「じゃあ次の曲いくか」
「うん」
そして2人が歌い出す。
ハルカナのライブを楽しんでいる時間は、人生で1番幸せな時間だった。