――ウワーッ、カレンに抱きしめられた!

 驚いたウォーレンは、すっかり可愛らしくなってしまった前脚をパタパタとうごかす。カレンはウォーレンの首あたりのふわふわの毛に顔をうずめ、クスクスと笑った。

「なぜか、懐かしい匂いがするわ。すごく大好きで、とっても落ち着く匂い。アナタはイヤかもしれないけど、このまましばらく抱っこさせてちょうだいな」

 うららかな日差しのもとで、カレンはウォーレンをより一層強く抱きしめる。

――カレン、カレンが近いぞ! そして、なにやらすごくいい匂いがする! な、なんなんだこの匂い! 同じ石鹸を使っているはずなのに!

 ウォーレンの心臓が早鐘のように鳴った。またもや尻尾が高速回転しはじめている。
 なにも事情を知らないカレンは、ふと小さくため息をついた。

「ああ、ずっとこうやってワンちゃんと遊んでいたい。皇后なんて、本当は嫌なの」

――なぬ!?

 寝耳に水だった。ウォーレンははじかれたように顔をあげる。
 カレンは悲しそうな顔をして、遠くを見ていた。