「私が泣いているところを見てしまいましたわよね? 情けないところを見せてしまいました……。どうか、失望しないでくださいまし……」

 よろよろと頭を下げるカレンに、いつもの隙のない冷たい顔をした皇后の影はどこにもない。やはり、生真面目なカレンは無理をして理想の皇后の仮面を被っていただけだったのだ。
 改めて年下の妻の健気さに気づき、心を打たれたウォーレンはその場に膝をつき、頭を下げるカレンの顔をのぞきこんだ。長らく見つめあうことを避けていたふたりの視線が、ようやく交わった。

「カレン、顔を上げてくれ。君はよくやっている。どんなときだって頑張ってきた君を、俺は高く評価しているんだ」

 ウォーレンは必死でカレンに想いを伝える。プライドや羞恥心を気にしている場合ではない。今こそ、向き合うべき時だ。

「君の父親が、カレンに世継ぎの話をしていることも知らなかった。君にばかり、心労をかけてしまったようだ」
「へ、陛下……?」