――カレンが、泣いている……。こんなにも、俺はカレンを傷つけていたのか……。

 カレンがいつも頑張っているのは自明のことだし、まわりの宰相たちも、カレンを高く評価している。国民たちも、カレンを慕っている。
 ウォーレンも、もちろんカレンを尊敬し、心の底から感謝していた。しかし、思い返せばその感謝の言葉を口下手なウォーレンが口にしたことは一度もない。態度に出したこともなかったはずだ。
 そして、ウォーレンから褒めて貰ったことがないカレンは自分が至らぬからだと勘違いし、密かにひどく傷ついていた。
 
――すまなかった。君はまわりの人間に認められているし、強い君であれば、大丈夫だと思ったのだ! しかし、俺が間違っていた。君は、こんなにも傷ついていたというのに、俺は君に甘えてばかりで……っ!

 ウォーレンは必死で謝った。しかし、口から漏れるのは、「ばうばう!」という鳴き声だけ。オロオロと走り回り、けたたましく吠えるウォーレンの真意を、カレンは理解できない。

「どうしたの、ワンちゃん? お家に帰りたいのかしら? それとも、なにか気になることでもあった?」