「あんなこと聞かされた後なのに、なんであんなに普通に会話できるんだろう」


私にはそれが不思議でならなかった。


「ねぇ、結」


休憩時間、結が1人でいるところを見計らって私はまた声をかけた。


「なに?」


結は少し警戒するように私から距離を置いた。
その反応に戸惑いつつも「弥生とは一緒にいないほうがいいよ? また、どんなことを影で言われるかわからないから」と、予め考えておいた言葉を紡ぐ。

しかし結は表情を歪ませると、まるで汚いものでも見るような視線をこちらへ向けたのだ。


「弥生とはちゃんと話をしたよ。同じ時に弥生は詩子から私のことを聞いたって言っていた。ねぇ、どうしてそんな嘘つくの?」


強い口調で言われて後ずさりをする。

弥生と結は私たちから話を聞いたあと、ちゃんとふたりで話をしたみたいだ。
さすがに一筋縄ではいかないみたいだ。


「嘘なんかじゃないけど……信じないなら、いいよ」


私はもごもごと口の中だけで言うと、すぐにその場を離れたのだった。