あまりに浩二が豊のことを気にしているので、私は時々豊の部活風景を動画に撮って見せてあげることにしていた。
スマホの画面の中で、小さな豊がゴールへ向けて走っている。

その様子を浩二は真剣な眼差しで見つめる。
そして時々、目に光るものを浮かべるときもあった。


「さすが豊だな。いい走りをしてる」


浩二が画面から顔を上げて何度も頷いた。
本当なら豊の隣には浩二がいるはずだった。

一緒になってグラウンドを走っていたはずだ。
そんな気持ちが沸き上がってくるのか、動画を見た後は必ず数秒間無言で目を閉じている。

そんなに辛いなら辛いと言えばいいのに。
豊を憎んで、さっさと絶交すればいいのに。

内心ではそう思いながら私は優しく浩二の手を握りしめる。


「大丈夫?」

「うん。こうして見せてくれて嬉しい」


浩二は私の手を握り返してくる。