浩二はサッカーをしていなくても、弟的な存在として人気になっていたかもしれない。


「本当だよ。だからお見舞いに来てるんだから」


浩二は大きく息を吐き出す。
その顔はまだ赤い。


「実はさ、女子生徒のお見舞いって、来てくれるのは雛ちゃんだけなんだ」

「え?」


予想外の言葉に私が目を丸くする番だった。
浩二は寂しそうに目を伏せる。


「きっと、みんな遠慮してるんだと思うんだけどね。俺が両足切断したから」


そうか。
浩二のファンは浩二がサッカーをしている姿ばかりを見ている。

だからその両足を失った浩二にどう接すればいいかわからないんだろう。

もしくは、サッカーを取り上げられてしまった浩二に魅力を感じなくなった子もいるかもしれない。

どっちにしても、私以外に誰もお見舞いに来ていないなんてラッキーだった。
学校内ではライバルが多すぎて、こうして近づくこともできないんだから。