不意に声をかけられてビクリと跳ね上がる。
横を見るとC組の女子生徒が怪訝そうな表情で私達を見ていた。


「な、なんでもないの。ちょっと、見てただけだから」


私はしどろもどろになって答えて、笑みを作る。
しかし真面目そうな女子生徒はその場を去ろうとはしない。


「誰かに用事なら呼ぼうか?」

「ううん。本当に、大丈夫だから」


詩子が顔の前で左右に手を振る。
ここで谷岡くんを呼ばれても困る。
私達にそこまでの面識はないのだから。


「そう?」


女子生徒はまだ怪訝そうな顔を浮かべている中、私と詩子は逃げるように自分たちの教室へ戻ったのだった。