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谷岡勇という名前は私も聞いたことがあった。
2年生のころに同じB組にいた生徒だ。

目立つタイプではないけれど、顔立ちが整っていて優しい性格をしているので女子生徒からは密かに人気があった。
その勇が、弥生と結の好きだった人。

いや、今でも好きであろう人だ。


「谷岡くんとは面識があるけど、世間話をするほどの関係じゃないんだよね」


私は腕組みをして呟いた。
詩子が有力情報を持ってきてくれてから、それをどう使うかを思案している。

谷岡くんは3年C組に在籍しているので話しを聞きに行こうかと思ったけれど、それほどの関係性を持っているわけではなかった。
今私が谷岡くんに接触すれば、必ず違和感を抱かれるだろう。


「できれば、谷岡くんの気持ちを知っておきたいけど、それは無理か……」


詩子も悩んだ様子で眉間に深いシワを刻んでいる。

もしも谷岡くんが弥生と結のどちからに恋愛感情を抱いていれば、それを利用してふたりの関係をこじれさせることができると思うのだけれど、そう簡単ではなさそうだ。