馬車に揺られて街道を走る。
 ハベリア家が治める、のどかな田園地帯を抜ける。

 徐々に建物の数が増えていった。
 そして公爵家の位置する都市の方面へ。

 赤レンガの屋根を持つ家々が立ち並び、雑踏は人で溢れている。
 マイアが都会に赴く機会はほとんどなかった。
 妹のコルディアは都市に出て男遊びをしており、何度も自慢話を聞かされたものだ。

「すごい……!」

 本当に活気に満ちている。
 車窓からぐるぐると目を回していると、馬車が一つの建物に向かっていることがわかった。

 ──城だ。
 白亜の城が徐々に近づいている。
 あれがジョシュア公爵家。

 そして……今日からマイアの住まいとなる場所だ。
 あの狭い小屋から一転、広大な楽園へ。

 問題は夫となるジョシュア公爵の性格だが……とりあえず食事さえ一日一食、与えてもらえれば構わない。

 そんなことを考えていると、馬車が停止。
 馬車から降りたマイアの視界には──とんでもない広さの庭園が広がっていた。