マイアは急速に空腹感を刺激され、破竹の勢いで料理を食べ始めた。

「そうか。美味いのならばよかった。
 喉に詰まらせないよう、気をつけて食べてくれ」

 心なしかジョシュアの表情は和らいでいた。
 料理人の腕が褒められたということもある。
 しかし一番彼を喜ばせているのは、マイアが幸せそうに料理を食べる姿。

 マイアが幸せそうに食べてくれるだけで心が和やかになった。
 今の彼女はどう見ても細い。
 この調子で食事を続けてくれれば、健康を取り戻せる。

 白くふわふわとしたパンを口に詰め込んでいる様子を見ると、マイアはかなり腹が減っていたのだろう。明らかに年齢に見合っていない食事量が、彼女の細い体から見て取れた。
 やせ細るほど食べられない環境など、貴族ではあり得ない。

(アランは上手く密偵を手配できただろうか)

 ジョシュアは思案する。
 マイアはハベリア家でどのような待遇だったのか、徹底的に調べさせるつもりだ。

 支度金を送る約束をハベリア家と交わしている。
 ジョシュアもマイアの様子を見るまでは、すぐにハベリア家へ支度金を送るつもりだったが……どうやら少し考えなくてはならないようだ。

 夕食の時間はゆったりと過ぎ去っていく。