そんな彼女をよそに、ジョシュアは食事を始める。

「マイア嬢、食べられないものはあるか?」
「あ、いえ! 本当に私がいただいてもいいんですね?」
「もちろん。不満があれば言ってくれ」

 意を決してマイアはナイフとフォークを手に取る。
 食事作法は恥ずかしくない程度には復習しておいた。

 まずはマリネから手をつけ、口に運んでみる。

「ん゛」

 マイアの身に起こった事態。
 それは硬直。彼女はしばらく咀嚼して飲み込んでから硬直した。

 目を見開いて固まる彼女を見て、ジョシュアは咄嗟に立ち上がった。

「おい、どうした? まさか喉に詰まったか……!?
 いますぐ水を……」
「おいしい……!」
「は?」
「お、おいしすぎます!!」

 こんなに美味しい料理は食べたことがない。
 マイアの硬直は衝撃ゆえのもの。
 決して喉を詰まらせたわけではなかった。

 淑女たる振る舞いすら忘れて、マイアは感激してしまっていた。
 広がる豊かな風味、奥深い味わい。
 伯爵家で妹のコルディアさえも食べられないほどの、一流の料理。