公爵家の規模の大きさに、またもやマイアは驚くことになる。

 湯けむりがもくもくと立ち昇る。
 百人以上も入りそうなバスタブ。水面に浮かんだ果実。

「これが、お風呂……」

 一人で使うには大きすぎる。
 マイアはお湯に浸かりながら考え込む。

(女嫌いの公爵様が、どうしてこんな立派な待遇を……?)

 噂通りのジョシュア公爵であれば、マイアをここまで厚遇する意味がない。
 公爵家の格を落とさないためだろうか。
 それともマイアが今まで過ごしていた環境が酷すぎて、厚遇されているように感じるのか。

 まあ、どうでもいいか。
 楽観的に物事を考え、マイアは立ち上がる。

「これがシャンプーというやつ?」

 人生で初めて触れるシャンプーという液体。
 なんだかいい香りがする。

 これで髪を洗うと、とても艶が出ると……妹のコルディアが自慢していた記憶がある。たしかに妹の髪はとても艶があって、頻繁に両親が褒めていた。

 物は試しにと使ってみる。
 どうしても使い方がわからなかったら、あとでセーレに聞いてみよう。