食い気味に返答したマイアにジョシュアは面食らった。
 愛のない結婚などと伝えれば、さすがにマイアも考えてくるかと予想していた。

「ほう……そんなに即断即決してもいいのか?
 契約結婚という旨を伝えれば、しばらく考え込むものだと予想していたのだが」
「はい、問題ありませんわ」

 やけに瞳を輝かせて頷くマイア。
 ジョシュアも妻を愛することなく過ごすつもりだったが、ここまで肯定的だと心配になってくる。

「ふ、ふむ……俺は君と関わることはほとんどないだろう。仕事がかなり多忙を極めているし、部屋も別々にする。使用人に君の世話は任せるが、君に対して仕事を与えたりすることはほとんどない。
 好きな物を買うだけの金は与えるから、自由に過ごしてもらうだけだ。君は公爵家に携わる役割をほとんど得られないのだぞ?」
「はい、ありがとうございます! この上なく嬉しいです」
「……あ、ありがとう?
 いや、何でもない。君が問題ないと言うなら構わない」

 礼儀正しく頭を下げるマイアに対して、ジョシュアはますます混乱する。
 マイアが噂通りの人間であれば、公爵家の権力を使って色々と企みそうなものだが。しかしジョシュアにとって、マイアがおとなしくしてくれるのは好都合だ。