「あの、ありがとうございました」

「いえいえ。君が嫌そうな顔をしてたからね」

男性はアミル・ドワイリと名乗り、私も自分の名前を教え、もう一度お礼を言った。すると、アミルさんは私の手を掴む。

「これも何かの縁だし、ナンパから助けたお礼ってことでちょっと付き合ってくれない?ドバイ水族館のチケット余っててさ」

そう言って連れて行かれたのは、世界最大級のショッピングモールであるドバイモールだった。その中に水族館があるらしい。

「ショッピングモール内に本当に水族館があるんだ……」

日本のショッピングモールでは見られない巨大な水槽に私が驚いていると、「美砂を連れて来てよかった」とアミルさんは笑う。

まだ繋がれたままの手が、やけに熱を帯びていた。



ドバイに来て数週間が経った。私はアミル(敬称はつけなくていいと言われた)が協力してくれたおかげで、ホテルで住み込みで働けるようになり、休みの日にはアミルと会って観光地を回ったりすることが増えた。