「お姉さん！ブルジュ・ハリファ行こうよ！いい景色が見られるよ！」

「その後はホテルのバーで一緒に飲もうぜ？」

断っても断っても二人はナンパをやめない。この二人について行ったら、最終的にはどうなるか何となく予想がつく。でも重いキャリーケースと鞄を持って全速力で走っても、きっと追い付かれるのがオチだろう。

（こういう時、一体どうすれば……）

周りには人がいたものの、チラチラとこっちを見ているだけで助けてくれそうにない。捕まってしまうリスクの方が大きいが走るか、と思ったその時だった。

「いたいた！勝手に離れるなって言っただろ？」

そんな声と共に私の腰に褐色の腕が回され、抱き寄せられる。驚いて見上げれば、癖のある黒髪にパッチリとした大きな目のイケメンがいた。彼氏のフリをしてくれてるみたいだ。

「ごめんなさい。初めての海外旅行ではしゃいじゃって」

彼に話を合わせると、男性二人は「彼氏持ちかよ」とガッカリした様子で立ち去っていく。ホッとし、私はすぐにお礼を言った。